【ヘアピンマッチ】分布定数回路の整合(3)伝搬定数(γ=α+jβ)について(前半)

 ヘアピンマッチ計算で必要な知識が、伝搬定数γの虚数部:位相定数βです。
 一方、実部のαは減衰定数と呼ばれ、線路のロスを表しますが、通常の給電線の場合には、α≒0と見なします。しかし、位相定数βは無視できません。伝搬する電波の波長に関係して、伝送線路の位置によって、その位相状態が刻々と変わっていくからです。

 前回のアンテナ本の流れから、この伝搬定数について、アマチュア無線向けではない、少し詳しく解説した内容です。といっても、数学レベルは、単なる一次方程式の変形です。
 なお、今回の理論説明は長くなっているため、前半と後半に分けて行います。

(本論)
 前回の第5.4図(a)を使います。
第5.4図(a)ΔX間の基本等価回路.png
 ab端子間の 上記の第5.4図(a)について、ab端子の電圧V1あるいは電流I1が、a'b'端子に伝送するとき、どのように変化するかを求めます。
V1/I1=V2/I2=Zo
となることはわかります。
そこで
V1/V2=I1/I2  ......(5.4)
の値を計算します。

 第5.4図(a)にキルヒホッフの法則を使い
V1={(Z/2)Δx+(1/YΔx)}I1-(1/YΔx)I2
                       ......(5.5)

V2=(1/YΔx)I1-{(Z/2)Δx+(1/YΔx)}I2
                       ......(5.6)
とあらわすことができます。

 (5.6)式をI2で割りますと
V2/I2=(1/YΔx)(I1/I2)-{(Z/2)Δx+(1/YΔx)}
∴ Zo(YΔx)=(I1/I2)-{(Z/2)YΔx^2}-1
                       .....(5.7)

(5.7)式のZoに、(5.2)式の√(Z/Y)を代入して式を整理しますと
I1/I2=1+√(ZY)Δx+(ZY/2)Δx^2
                     .....(5.8)

(5.8)式において
√(ZY)=γ            ......(5.9)
※ 本当はZ,Y,γともベクトルを表す「・」が上に付きます。
とおきますと
I1/I2=1+γΔx+(γ^2/2)Δx^2
                  ......(5.10)
 
(5.10)式の右辺は
e^x=1+x+(x^2/2!)+・・・・・
※ !は数学の階乗を意味です。
                  ......(5.11)
の形となっています。また、γΔxは1よりも非常に小さいという条件にすることができますから、(5.11)式のxをγΔxとおくと
I1/I2=e^(γΔx)        ......(5.12)
という等式になります。

この(5.12)式はΔxの間の電流の伝送比を表し、これは電圧の伝送比の値でもあります。
 そこで、この伝送比をγ(ガンマ)として表し、γは単位長さあたりの電圧、電流の伝送比を表す値であって「伝搬定数」といいます。

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