【ヘアピンマッチ】分布定数回路の整合(4)伝搬定数(γ=α+jβ)(後半)
MMANAの表示オプション(V)の「スタブマッチ」タブにある計算部分は、本来は分布定数回路による整合手法の一種である「L形分岐」整合回路のなかの「短絡線路によるL形並列分岐」というのが、正式な回路名称です。
それをMMANAでは、ヘアピンマッチ回路に応用しています。ですので、元のL形分岐による整合回路形状が少し複雑で、設計条件によっては、邪魔なL1の長さが大きくなる場合があって、ヘアピンマッチとして使えない場合も考えられます。
(結果は解1と解2の2つから選べるので、どちらかは使えるのかもしれません。)
そこで、これをヘアピンマッチ専用のスタブ設計用ツールとして回路計算する簡易モデルをエクセルで作成してみました。一応、前回示したエクセル計算表での直径2㎜の電線を使用して線間10mm~130mmの間においての10mm間隔ごとの計算をMMANAのスタブマッチ計算と突き合わせたところ、最終必要とするスタブの長さ(L2s)はピタリと合致しています。
ただ、そのエクセル表を使えば、今回の理論を知らなくても計算だけはできてしまいます。それでは、この整合回路自体を理解して使う意味が無いように思います。
(本論)
今回も第5.4図(a)を使います。

γは、前回の最終の(5.12)から
I1/I2=e^γΔx .....(5.12)
ここで、γはΔx=1のときの(5.12式から
γ=loge(I1/I2)=loge(V1/V2) .....(5.13)
また、γは、(5.9)式から
√(ZY)=γ .....(5.9)
∴
γ=√(R+jωL)(G+jωC) ....(5.14)
となります。
γの定義である(5.12)式から、送端の電圧、電流をV1,I1とし、送端からl(エル)の距離の電圧、電流をV2,I2としますと
V2,I2は、
V1 I1
──=───=e^γl
V2 I2
∴
V2=V1e^(-γl)=Zoe^(-γl)
}.....(5.15)
I2=I1e^(-γl)=(V/Zo)e^(-γl)
となります。
(5.15)式は無限長線路あるいは特性インピーダンスで終端した
線路の電流、電圧分布を表す式です。
この式で、γを
γ=α+jβ .....(5.16)
と実部αと虚部βにわけてみると、e^(-αl)は振幅の減衰を表し、e^(-jβl)は位相の遅れを示しています。
αを減衰定数、βを位相定数とよびます。
さて、(5.14)式から減衰定数αと位相定数βを求めるには、R≪ωL,G≪ωCですから、RとGをはじめから無視しますと
γ=√(-ω^2LC)=jω√(LC) .....(5.17)
したがって
α=0 .....(5.18)
β=ω√(LC) .....(5.19)
と求めることができました。
この場合には、αは無視できるほど小さいことになります。
また、αをもう少し詳しく算出する場合には、(5.14)式をjωLとjωCでくくって
(R+jωL)(G+jωC)
=j^2ω^2LC(1+R/jωL)(1+G/jωC)
∴
γ=jω{√(LC)}(1+R/jωL)^1/2(1+G/jωC)^1/2
.....(5.20)
上式において、R/ωL≪1、G/ωC≪1ですから
( )内を (1+Δ)^n ≒1+nΔ
の近似式を適用すれば
∴
γ≒jω{√(LC)}(1+R/j2ωL)(1+G/j2ωC)
=jω{√(LC)}(1-jR/2ωL)(1-jG/2ωC)
上式の実数部αは、
α=√(LC)R/2L+√(LC)G/2C
=(R/2)√(C/L)+(G/2)√(L/C)
=R/2Zo+GZo/2 .....(5.21)
この(5.21)式が次にやる「平行2線式給電線」の計算に必要なのです。
そして、「平行2線式給電線」の終端をショート(短絡)したかたちがヘアピン・スタブになります。
それをMMANAでは、ヘアピンマッチ回路に応用しています。ですので、元のL形分岐による整合回路形状が少し複雑で、設計条件によっては、邪魔なL1の長さが大きくなる場合があって、ヘアピンマッチとして使えない場合も考えられます。
(結果は解1と解2の2つから選べるので、どちらかは使えるのかもしれません。)
そこで、これをヘアピンマッチ専用のスタブ設計用ツールとして回路計算する簡易モデルをエクセルで作成してみました。一応、前回示したエクセル計算表での直径2㎜の電線を使用して線間10mm~130mmの間においての10mm間隔ごとの計算をMMANAのスタブマッチ計算と突き合わせたところ、最終必要とするスタブの長さ(L2s)はピタリと合致しています。
ただ、そのエクセル表を使えば、今回の理論を知らなくても計算だけはできてしまいます。それでは、この整合回路自体を理解して使う意味が無いように思います。
(本論)
今回も第5.4図(a)を使います。

γは、前回の最終の(5.12)から
I1/I2=e^γΔx .....(5.12)
ここで、γはΔx=1のときの(5.12式から
γ=loge(I1/I2)=loge(V1/V2) .....(5.13)
また、γは、(5.9)式から
√(ZY)=γ .....(5.9)
∴
γ=√(R+jωL)(G+jωC) ....(5.14)
となります。
γの定義である(5.12)式から、送端の電圧、電流をV1,I1とし、送端からl(エル)の距離の電圧、電流をV2,I2としますと
V2,I2は、
V1 I1
──=───=e^γl
V2 I2
∴
V2=V1e^(-γl)=Zoe^(-γl)
}.....(5.15)
I2=I1e^(-γl)=(V/Zo)e^(-γl)
となります。
(5.15)式は無限長線路あるいは特性インピーダンスで終端した
線路の電流、電圧分布を表す式です。
この式で、γを
γ=α+jβ .....(5.16)
と実部αと虚部βにわけてみると、e^(-αl)は振幅の減衰を表し、e^(-jβl)は位相の遅れを示しています。
αを減衰定数、βを位相定数とよびます。
さて、(5.14)式から減衰定数αと位相定数βを求めるには、R≪ωL,G≪ωCですから、RとGをはじめから無視しますと
γ=√(-ω^2LC)=jω√(LC) .....(5.17)
したがって
α=0 .....(5.18)
β=ω√(LC) .....(5.19)
と求めることができました。
この場合には、αは無視できるほど小さいことになります。
また、αをもう少し詳しく算出する場合には、(5.14)式をjωLとjωCでくくって
(R+jωL)(G+jωC)
=j^2ω^2LC(1+R/jωL)(1+G/jωC)
∴
γ=jω{√(LC)}(1+R/jωL)^1/2(1+G/jωC)^1/2
.....(5.20)
上式において、R/ωL≪1、G/ωC≪1ですから
( )内を (1+Δ)^n ≒1+nΔ
の近似式を適用すれば
∴
γ≒jω{√(LC)}(1+R/j2ωL)(1+G/j2ωC)
=jω{√(LC)}(1-jR/2ωL)(1-jG/2ωC)
上式の実数部αは、
α=√(LC)R/2L+√(LC)G/2C
=(R/2)√(C/L)+(G/2)√(L/C)
=R/2Zo+GZo/2 .....(5.21)
この(5.21)式が次にやる「平行2線式給電線」の計算に必要なのです。
そして、「平行2線式給電線」の終端をショート(短絡)したかたちがヘアピン・スタブになります。
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