【最終】MMANAスタブマッチ解析(10)L形並列分岐整合(5)ヘアピンマッチの場合
今回でMMANAのオプション(V)スタブマッチに関する探究は完了とします。「スタブマッチを使ってヘアピンマッチのスタブ長をどのように求めているか?」が、今回までの記事を順に読んでいただければ、今回にて、すべて解決します。
今回は、スミスチャートとアドミタンスチャートの両方を使い説明します。ただし、並列動作であるヘアピンマッチのスタブ長を求めるには、アドミタンスチャートのほうがはるかに簡単です。
ただ、MMANAのオプション(V)環境設定で、アンテナのR→適正X値を求めている部分は、スミスチャート上でのほうが理解しやすいので、そちらは、スミスチャート表示としました。
※今回のスミスチャートグラフ(空表)は、エクセル表で作業できる
スミスチャート解析(フリー版)(SM-PLOT-F-R8)
https://www.vector.co.jp/soft/winnt/business/se501860.html
で「分析エクセル表Ver2」データをそのまま使い、スミスチャートとアドミタンスチャートに同時に描画しています。
(本論)
1 アンテナRと適正X値のインピーダンスZ=R-jXの変化(R:1.5Ω→50Ω)(X:-8.5→25→0と変化)を正規化(ここでは、両方を50Ωで割る。)した、r+jxを0<r-jx≦1とした点としてスミスチャート上にプロットした場合は次図のように下半分の半円を描きます。この半円上にRとXの合成値があれば、ヘアピンマッチの計算ができるという意味です。

2 その代表点A(=B)を表示
※前回のL形並列分岐でのA点とB点は同じ位置にある意味です。∴L1=0が満足します。
R+jX=25-j25[Ω]の点を上記スミスチャート上で表記しています。アンテナのRが25Ωの場合、最適X値は、-25Ωという意味です。
正規化しているためにスミスチャート上での点は、r+jx=25/50-j25/50=0.5-j0.5の点になります。
3 共役点B'を表示
R+jX=25-j25[Ω]の共役な点は、R-jX=25+j25[Ω]ですが、これの正規化するとr-jx=0.5+j0.5の点の位置B’になります。今回のヘアピンマッチでは、この共役点でのリアクタンスを0とする整合をとります。
4 アドミタンスチャート上に転記
上記、r+jxの点の軌跡となる半円とA(=B)とB’とをアドミタンスチャート上でとりますと次図になります。

(1)r+jxの点集合の半円とg+jbの半円は全く同じ
G=1/R、B=1/Xの関係から、これを1/50=0.02を基準にして正規化した値、g+jbが描く半円と一致します。つまり、r+jxは、g=1の円の円周上にあるという意味です。
(2)代表点R+jX=25-j25[Ω]を例示しますとA点(=B点)は、スミスチャート上で表す点位置と合致しています。ただし、アドミタンスチャートでは、g+jb=1-j1[℧またはS]の位置になります。
5 スタブ長L2を求めるには、
前回のL形並列分岐と手順はまったく同じです。
(1)中心点が(g=1,b=0)でS:SWR=一定となるA(B)点を通る円を描きます。この円とg=1との交点となる2点、B(A)と共役点B’が求まります。
また、定SWRの円の回りかたは、負荷から電源に向かっているので、右回りとなります。
(スタブの位置と長さを求める場合も同じで、右回りとなります。)
(2)スタブ長が短い方を取りたいので、共役点B'を採用する。
次にB’点を通るサセプタンス円を辿り、アドミタンスチャート外周円のC’点まで移動します。サセプタンスb=∞(x=0)のD点からこのC’点位置までのアドミタンスチャートの外周における距離が、リアクタンスxで見るとx→0[Ω]とすることができるスタブの長さを意味しています。
一方、D点から左回りしたC点の距離も同じ長さになるのですが、スタブを使用した整合の場合には、時計と反対回りでの距離を採用できません。このC点の場合は、右回りをして、C’点を越えて、さらにb=0の点を通過して、やっとC点に到達できるまでの距離となるので、C’点に比べると距離が長く(=スタブが長く)なってしまうのです。
(3)D点からC’点までの距離をアドミタンスチャートの外周にある数値で読み取る。
スタブを使用した場合、チャート上の外周移動は、時計回り(右回り)しかできませんから、スタブ長:0の位置b=∞(x=0)となるD点から近い距離でとれるB'点との距離を求めます。これが、求めたいスタブ長L2となります。
※距離といっても外周目盛りは、波数(1/λ)となっているので、使用波長λを掛けて、長さL2[m]に変換します。
(補足)
あくまで、g=1の下半円上にあるRとXの合成値でないとこの理論で求めることはできません。ですから、MMANAでは、アンテナのRとXをそのまま使うのではなく、R(<50Ω)に適用できる最適X値を先に計算してから、そのRと最適X値でスタブマッチを適用しているのです。
ただし、厳密にg=1の円に一致しなくても”だいたい”、その付近に位置していれば、L1≅0[m]を満足できるので、そのままスタブ長L2計算しても問題がない場合もあるのです。
アンテナの設計や分析の場合、この「だいたい」がとても意味をもちます。すなわち、厳密な値を追求しても意味がありません。言い換えれば、SWR=1をひたすら求めることには、意味が無いのです。
また、
MMANAスタブマッチ解析(8)L形並列分岐整合(3)4端子回路網とみた整合回路(3)
https://jo3krp2.seesaa.net/article/518027157.html
補足で1÷0を数学では、意味が無いとしていますが、物理では、大いに意味があります。それは、0では無く、0に近いとても小さい値で1を割るという考えです。ですから、結果はとても大きな数となります。(無限大+∞)
ただ、0に近いといっても-1側から0に近づく場合も考えられるので、負のとても大きな数(-∞)の場合もあって、両者はまったく別物です。ですから、両者を同時に示すときは、±∞と表示します。
※tan90°=tan(π/2)=±∞のときのグラフ図がその例です。0°→90°に近づく場合+∞に大きくなり、180°→90°に近づく場合には、-∞になります。
このように数学と物理では、数値に対する考え方が違う場合があります。SWR=1は数学的(=理論上)には正しいのですが、物理的(=現実)には、あまり意味のない数値であるということになります。
今回は、スミスチャートとアドミタンスチャートの両方を使い説明します。ただし、並列動作であるヘアピンマッチのスタブ長を求めるには、アドミタンスチャートのほうがはるかに簡単です。
ただ、MMANAのオプション(V)環境設定で、アンテナのR→適正X値を求めている部分は、スミスチャート上でのほうが理解しやすいので、そちらは、スミスチャート表示としました。
※今回のスミスチャートグラフ(空表)は、エクセル表で作業できる
スミスチャート解析(フリー版)(SM-PLOT-F-R8)
https://www.vector.co.jp/soft/winnt/business/se501860.html
で「分析エクセル表Ver2」データをそのまま使い、スミスチャートとアドミタンスチャートに同時に描画しています。
(本論)
1 アンテナRと適正X値のインピーダンスZ=R-jXの変化(R:1.5Ω→50Ω)(X:-8.5→25→0と変化)を正規化(ここでは、両方を50Ωで割る。)した、r+jxを0<r-jx≦1とした点としてスミスチャート上にプロットした場合は次図のように下半分の半円を描きます。この半円上にRとXの合成値があれば、ヘアピンマッチの計算ができるという意味です。
2 その代表点A(=B)を表示
※前回のL形並列分岐でのA点とB点は同じ位置にある意味です。∴L1=0が満足します。
R+jX=25-j25[Ω]の点を上記スミスチャート上で表記しています。アンテナのRが25Ωの場合、最適X値は、-25Ωという意味です。
正規化しているためにスミスチャート上での点は、r+jx=25/50-j25/50=0.5-j0.5の点になります。
3 共役点B'を表示
R+jX=25-j25[Ω]の共役な点は、R-jX=25+j25[Ω]ですが、これの正規化するとr-jx=0.5+j0.5の点の位置B’になります。今回のヘアピンマッチでは、この共役点でのリアクタンスを0とする整合をとります。
4 アドミタンスチャート上に転記
上記、r+jxの点の軌跡となる半円とA(=B)とB’とをアドミタンスチャート上でとりますと次図になります。
(1)r+jxの点集合の半円とg+jbの半円は全く同じ
G=1/R、B=1/Xの関係から、これを1/50=0.02を基準にして正規化した値、g+jbが描く半円と一致します。つまり、r+jxは、g=1の円の円周上にあるという意味です。
(2)代表点R+jX=25-j25[Ω]を例示しますとA点(=B点)は、スミスチャート上で表す点位置と合致しています。ただし、アドミタンスチャートでは、g+jb=1-j1[℧またはS]の位置になります。
5 スタブ長L2を求めるには、
前回のL形並列分岐と手順はまったく同じです。
(1)中心点が(g=1,b=0)でS:SWR=一定となるA(B)点を通る円を描きます。この円とg=1との交点となる2点、B(A)と共役点B’が求まります。
また、定SWRの円の回りかたは、負荷から電源に向かっているので、右回りとなります。
(スタブの位置と長さを求める場合も同じで、右回りとなります。)
(2)スタブ長が短い方を取りたいので、共役点B'を採用する。
次にB’点を通るサセプタンス円を辿り、アドミタンスチャート外周円のC’点まで移動します。サセプタンスb=∞(x=0)のD点からこのC’点位置までのアドミタンスチャートの外周における距離が、リアクタンスxで見るとx→0[Ω]とすることができるスタブの長さを意味しています。
一方、D点から左回りしたC点の距離も同じ長さになるのですが、スタブを使用した整合の場合には、時計と反対回りでの距離を採用できません。このC点の場合は、右回りをして、C’点を越えて、さらにb=0の点を通過して、やっとC点に到達できるまでの距離となるので、C’点に比べると距離が長く(=スタブが長く)なってしまうのです。
(3)D点からC’点までの距離をアドミタンスチャートの外周にある数値で読み取る。
スタブを使用した場合、チャート上の外周移動は、時計回り(右回り)しかできませんから、スタブ長:0の位置b=∞(x=0)となるD点から近い距離でとれるB'点との距離を求めます。これが、求めたいスタブ長L2となります。
※距離といっても外周目盛りは、波数(1/λ)となっているので、使用波長λを掛けて、長さL2[m]に変換します。
(補足)
あくまで、g=1の下半円上にあるRとXの合成値でないとこの理論で求めることはできません。ですから、MMANAでは、アンテナのRとXをそのまま使うのではなく、R(<50Ω)に適用できる最適X値を先に計算してから、そのRと最適X値でスタブマッチを適用しているのです。
ただし、厳密にg=1の円に一致しなくても”だいたい”、その付近に位置していれば、L1≅0[m]を満足できるので、そのままスタブ長L2計算しても問題がない場合もあるのです。
アンテナの設計や分析の場合、この「だいたい」がとても意味をもちます。すなわち、厳密な値を追求しても意味がありません。言い換えれば、SWR=1をひたすら求めることには、意味が無いのです。
また、
MMANAスタブマッチ解析(8)L形並列分岐整合(3)4端子回路網とみた整合回路(3)
https://jo3krp2.seesaa.net/article/518027157.html
補足で1÷0を数学では、意味が無いとしていますが、物理では、大いに意味があります。それは、0では無く、0に近いとても小さい値で1を割るという考えです。ですから、結果はとても大きな数となります。(無限大+∞)
ただ、0に近いといっても-1側から0に近づく場合も考えられるので、負のとても大きな数(-∞)の場合もあって、両者はまったく別物です。ですから、両者を同時に示すときは、±∞と表示します。
※tan90°=tan(π/2)=±∞のときのグラフ図がその例です。0°→90°に近づく場合+∞に大きくなり、180°→90°に近づく場合には、-∞になります。
このように数学と物理では、数値に対する考え方が違う場合があります。SWR=1は数学的(=理論上)には正しいのですが、物理的(=現実)には、あまり意味のない数値であるということになります。
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