ワイヤーアンテナ本にある理論(結果)式の導出(11)一般電磁界でのVおよびAの解を求める(2)

 今回で、スカラポテンシャルVの解から簡単にベクトルポテンシャルの解を求めることができます。
(前回の続き)
 前回の最終式で時間変動する電界を含めた”一般電磁界”におけるスカラポテンシャルVを求めたことになります。ただし、最終式である
V=(1/r) { a e^j(ωt-kr)+b e^j(ωt+kr) } ...(20)
は、一般電磁界での電位Vのポアソン方程式の一般解です。一般解ですので、aとbという任意の実数が生じています。これは、結局、微分方程式を両辺を積分していくと生じる積分定数と同じです。二階階微分なので2個の任意の実数が生じています。そこで、この任意の実数部分を求めていきます。

 それには、「ワイヤーアンテナ本にある理論(結果)式の導出(8)」で求めました次の特殊解
   1   ρdv
V=──∫ ───  ....(16)
  4πε v  r 

 ※(補足)
  ここで、dvは微小体積要素を表して、
  電荷密度ρがある位置座標を(x’,y’,z’)とすると
  dv=dx’dy’dz’を意味します。
   (x’,y’,z’)座標は、電荷密度ρが存在する座標で、
  電位Vを計算する座標位置(x,y,z)ではありません。
  したがって、ρとは
  ρ(r’)=ρ(x’,y’,z’)で表す関数です。
  これに関しては、
   電磁気理論第0弾 静電場その10(静電ポテンシャル)
    https://jo3krp2.seesaa.net/article/201003article_22.html
  におけるスカラー関数φ(r)の式(15)を参考として下さい。
  ※電磁気では、φでしたが、アンテナ理論は、Vで表示
  φ(r)=(1/4πε0)∫(1/|rr’|)ρ(r’)d^3r’ ....(15)

  これと今回の静電界の場合の式
  V=(1/4πε)∫(ρ/r)dv ....(16)
         v
  とは、同じものです。

  したがって、式(16)の r は、厳密に書くと
 r=|rr’|=√{(x-x’)^2+(y-y’)^2+(z-z’)^2}
 となって、Vを求める位置と電荷密度ρが存在する位置との距離のことです。
 点電荷が原点にある場合は、原点からVを求めたい位置までの距離は r そのものです。
 また、式(15)で、dvはd^3r’(r’位置における微小な体積)で表現ですが同じものです。

 次は式(16)を上記式(20)に代入していくのですが、その前に式(20)の意味するところを探りますと
k=ω√(εμ)
 (∵ k^2=ω^2εμ ;前回記事参照)
は実数ですから、ωt-kr と ωt+kr が波の位相を表しています。
すなわち、式(20)の右辺は、二つの位相をもつ波の合成値ということです。

 そこで、式(20)の右辺第一項の波動が一定の位相Cでr方向へ進行するとして
ωt-kr=C
この両辺を時間tで微分しますと
ωt-k(dr/dt)=0
∴ 波の速度(dr/dt)=ω/k=1/√(εμ)=c ....(21)
  c;光速度

 すなわち、dr/dtは、ある点の正方向の速度を表しますから、1/√(εμ)はVの+r方向に伝わる速度となって、
これは、光速度と一致します。
 波数kは、距離1mあたりの位相の遅れを示すのですが、その場合には、kは実数のときであって、このときのkは位相定数となります。一般の場合だとkは、複素数となっていて、±jkは”伝搬定数”を表しています。

※(補足)
 伝搬定数は、
 ワイヤーアンテナ本にある理論(結果)式の導出(4)
  マクスウェルの波動方程式(2)
  https://jo3krp2.seesaa.net/article/519808308.html
 の記事後半に記述しましたように
>kは、伝搬定数と呼ばれるγ(ガンマ)と関係しています。
 γ=±jk
 ここで、式(4)から
 k=±√{ω^2εμ(1-jσ/ωε)} ....(10)
 さらに、上式は実数部と虚数部に分けることができますので
 γ=α+jβ
 α;減衰定数 β;位相定数

 ここで、導電率σ=0、すなわち無損失の空間では、この位相定数βは、
 γ=±jβ=±jk
 ∴ β=k=ω√(εμ)  ....(11)
 上記、式(10)は、電離層や大地上などで成り立つ式です。


 ここでは、kは、前者の位相定数として扱いします。一方、式(20)の右辺第二項の部分については、dr/dtは、負の値となるので反射波を示しますが、今回の条件に当てはまらないため、破棄します。
 ゆえに式(20)は、
V=(1/r){ae^j(ωt-kr)} ...(22)
となります。

 ここへ、式(11)の特殊解である式(16)を代入しますと
V=(1/4πε)∫(ρ/r){e^j(ωt-kr) }dv ....(23)

(∵ 式(16)において
  この場合、定常電磁界の場合の解であるので 
  位相項 j(ωt-kr)=0 (∵ω=0、k=0)  
  ∴ e^j(ωt-kr)=1
  その場合には、式(22)と式(16)との右辺同士から
  (a/r)=(1/4πε)∫(ρ/r)dv
  これを式(22)の右辺の(a/r)項へと代入しますと
  (1/4πε)∫(ρ/r){e^j(ωt-kr)}dv
  が求まります。
 )


 これで、一般電磁界における電位Vが完全に定まりましたから、求めたいベクトルポテンシャルは、Vの元の波動方程式である式(11)とベクトルポテンシャルAの波動方程式である式(10)と対比してみますと、Vの解である式(23)から、(ρ/ε)のところを単にoに置き換えるだけで求まることがわかります。

=(1/4π)∫(o/r){e^j(ωt-kr)}dv ....(24)
となって、ベクトルポテンシャルの解は簡単に求まりました。

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