ワイヤーアンテナ本にある理論(結果)式の導出(13)「光・電磁波工学」本による微小電流源からAを求め方【まとめ】
今回までのおさらいを「アンテナ本による理論数式の導出(1)微小ダイポールの放射電磁界(1)はじめに」の回で紹介した同様の理論展開をしている次の文献から要点をまとめています。
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光・電磁波工学
西原 浩、岡村康行、森下克己 共著
オーム社
2020年9月5日
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微小電流源のベクトルJと微小電流源Jを含む閉曲面の体積vと観測点Pとの関係を図示化してくれていますので前回までの積分式の意味合いが理解しやすいと思います。
(引用本の解説)
線状アンテナの基本要素は長さが十分短い微小な電線で、これを微小電流源と呼ぶ。

図7.4に示すように、微小電流源とは、角周波数ωの一様な電流Iが、長さΔl(L小文字)の微小な電線に流れている。このような微小電流源は、±I/ωの電荷がΔlの間隔をおいて存在しているダイポールと同等になり、微小電流ダイポール(微小DP)あるいはヘルツダイポールと呼ぶ。
次に、この微小電流DPからの電波の放射を考える。このような電波の放射の定式化には補助ベクトルを用いるのが便利である。
※補助ベクトルとは、ベクトルポテンシャルAを指します。
任意のベクトルAに対して、公式div(rotA)=0が成り立ち、磁界Hはこの補助ベクトルを使えば、
H=(1/μ0)rotA ....(7.1)
※divは「∇・」(発散)を、rotは「∇×」(回転)を意味しますから、アンテナ本と同形式で表すと
∇・(∇×A)=0
H=(1/μ0)∇×A ....(7.1)
以下、アンテナ本の表記に準じます。
EとBはマクスウェル方程式のひとつ、
∇×E=-μ0∂H/∂t ....(2.1)
で関係づけられているので、この式に(7.1)を代入して、
∇×(E+∂A/∂t)=0
;0は”ゼロベクトル”を指す。
もともと回転(∇×ベクトル量)が0となる電磁界は、ある任意関数Vの負勾配-∇Vで表されるので次式となる。
E=-∇V-jωA ....(7.2)
(∵ ∂/∂t=jω;波源が周期関数の場合
∴ E=-jωA
ですが、上記の「回転=0」の条件とは、
ヘルムホルツの定理のことです。
電磁気学(78)ベクトル(22)ヘルムホルツの定理
https://jo3krp2.seesaa.net/article/518906602.html
を参照していただくと
>3 次元の任意のベクトル場 E に対し、
>スカラーポテンシャル φ とベクトルポテンシャル A で
>E = − ∇ φ + ∇ × A) = − grad φ + rot A
>で表すことができる。(ヘルムホルツの定理 )
で、(電位)φはここではVと表現し、 rot A=0
ならば、(電界)Eは、-∇Vとなるから。
)
次に、マクスウェル方程式のもうひとつの関係式
∇×H=J+ε0∂E/∂t ....(2.2)
に(7.1)、(7.2)式を代入して、
( ∇×(1/μ0)∇×A=J-ε0 jω(-∇V-jωA)
∇×∇×A=μ0J-jε0μ0ω(-∇V-jωA)
∇×∇×A=μ0J+jε0μ0ω(∇V)+ε0μ0ω^2A
(∵ 虚数単位j・j=j^2=-1)
ここで、∇×∇×A=∇(∇・A)-∇^2Aを左辺に適用します。
ベクトル解析の公式(その1)
https://jo3krp2.seesaa.net/article/201208article_7.html
∇(∇・A)-∇^2A=μ0J+jε0μ0ω(∇V)+ε0μ0ω^2A
∇^2A+ε0μ0ω^2A=-μ0J+{∇(∇・A)-jε0μ0ω(∇V)} ....①
)
V=-(j/ωε0μ0)∇・Aを用いると
(∵ ①式の右辺にある{ }部分を∇が全体にかかるように整理すれば、
{∇(∇・A)-jε0μ0ω(∇V)}=∇{(∇・A)-jε0μ0ωV}
ここで、電位Vは任意の値をとることができるので、{ }式を消去するには、
V=1/(jε0μ0ω)(∇・A)=-(j/ωε0μ0)∇・A
と定めることで、①式が簡単になるからです。
)
∴
補助ベクトルAは次式の波動方程式となる
ΔA+ε0μ0ω^2A=-μ0J ....(7.3)
※ Δ=∇・∇=∇^2;ラプラシアン演算子、ε0;真空中の誘電率、μ0;真空中の透磁率、J;微小電流源(微小DP)の電流密度を示します。
※ 残念なことにこの微分方程式の解き方は明示してくれていません。

図7.5のように原点Oから距離r'の位置にある体積領域vの内部に波源J(位置ベクトルr',|r'|=r')がある場合を考える。原点から観測点P(位置ベクトルr)までの距離をr(=|r|)、波源から観測点までの距離をR=|r-r'|とすると、補助ベクトルAは次式で与えられる。
A=(μ0/4π)∫(J(r')/R){e^-jkr)}dv ....(7.4)
ここで、R=|r-r'|、波数k=2π/λ、λ;波の波長
※時間項のjωtは省略されていますが、ほぼ同じ解を得ています。
※μ0が冒頭にかかるのは、磁界H=(1/μ0)∇×AとしているからでHを用いる場合はこちらが正解です。一方、アンテナ本は、磁界B=∇×Aとした形式になっています。互いの関係は、B=μ0H(真空中の場合)です。
次に、微小電流源から放射される電磁界を考える。この場合、電磁界は球面上に放射されるため。球座標系(r,θ,φ)で考えると都合がよい。電流源が座標原点に置かれ、z軸方向に向いているものとする。このときR=rとなり、補助ベクトルAの成分はz軸成分Azのみとなる。さらに、電流源の長さをΔl、太さを十分細いものとし、全電流を実効値Iを用いて考えれば、電流源の体積積分は、IΔlとなり、Azは次式のようになる。
Az=(Iμ0Δl/4πr)e^-jkr ....(7.5)
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光・電磁波工学
西原 浩、岡村康行、森下克己 共著
オーム社
2020年9月5日
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微小電流源のベクトルJと微小電流源Jを含む閉曲面の体積vと観測点Pとの関係を図示化してくれていますので前回までの積分式の意味合いが理解しやすいと思います。
(引用本の解説)
線状アンテナの基本要素は長さが十分短い微小な電線で、これを微小電流源と呼ぶ。
図7.4に示すように、微小電流源とは、角周波数ωの一様な電流Iが、長さΔl(L小文字)の微小な電線に流れている。このような微小電流源は、±I/ωの電荷がΔlの間隔をおいて存在しているダイポールと同等になり、微小電流ダイポール(微小DP)あるいはヘルツダイポールと呼ぶ。
次に、この微小電流DPからの電波の放射を考える。このような電波の放射の定式化には補助ベクトルを用いるのが便利である。
※補助ベクトルとは、ベクトルポテンシャルAを指します。
任意のベクトルAに対して、公式div(rotA)=0が成り立ち、磁界Hはこの補助ベクトルを使えば、
H=(1/μ0)rotA ....(7.1)
※divは「∇・」(発散)を、rotは「∇×」(回転)を意味しますから、アンテナ本と同形式で表すと
∇・(∇×A)=0
H=(1/μ0)∇×A ....(7.1)
以下、アンテナ本の表記に準じます。
EとBはマクスウェル方程式のひとつ、
∇×E=-μ0∂H/∂t ....(2.1)
で関係づけられているので、この式に(7.1)を代入して、
∇×(E+∂A/∂t)=0
;0は”ゼロベクトル”を指す。
もともと回転(∇×ベクトル量)が0となる電磁界は、ある任意関数Vの負勾配-∇Vで表されるので次式となる。
E=-∇V-jωA ....(7.2)
(∵ ∂/∂t=jω;波源が周期関数の場合
∴ E=-jωA
ですが、上記の「回転=0」の条件とは、
ヘルムホルツの定理のことです。
電磁気学(78)ベクトル(22)ヘルムホルツの定理
https://jo3krp2.seesaa.net/article/518906602.html
を参照していただくと
>3 次元の任意のベクトル場 E に対し、
>スカラーポテンシャル φ とベクトルポテンシャル A で
>E = − ∇ φ + ∇ × A) = − grad φ + rot A
>で表すことができる。(ヘルムホルツの定理 )
で、(電位)φはここではVと表現し、 rot A=0
ならば、(電界)Eは、-∇Vとなるから。
)
次に、マクスウェル方程式のもうひとつの関係式
∇×H=J+ε0∂E/∂t ....(2.2)
に(7.1)、(7.2)式を代入して、
( ∇×(1/μ0)∇×A=J-ε0 jω(-∇V-jωA)
∇×∇×A=μ0J-jε0μ0ω(-∇V-jωA)
∇×∇×A=μ0J+jε0μ0ω(∇V)+ε0μ0ω^2A
(∵ 虚数単位j・j=j^2=-1)
ここで、∇×∇×A=∇(∇・A)-∇^2Aを左辺に適用します。
ベクトル解析の公式(その1)
https://jo3krp2.seesaa.net/article/201208article_7.html
∇(∇・A)-∇^2A=μ0J+jε0μ0ω(∇V)+ε0μ0ω^2A
∇^2A+ε0μ0ω^2A=-μ0J+{∇(∇・A)-jε0μ0ω(∇V)} ....①
)
V=-(j/ωε0μ0)∇・Aを用いると
(∵ ①式の右辺にある{ }部分を∇が全体にかかるように整理すれば、
{∇(∇・A)-jε0μ0ω(∇V)}=∇{(∇・A)-jε0μ0ωV}
ここで、電位Vは任意の値をとることができるので、{ }式を消去するには、
V=1/(jε0μ0ω)(∇・A)=-(j/ωε0μ0)∇・A
と定めることで、①式が簡単になるからです。
)
∴
補助ベクトルAは次式の波動方程式となる
ΔA+ε0μ0ω^2A=-μ0J ....(7.3)
※ Δ=∇・∇=∇^2;ラプラシアン演算子、ε0;真空中の誘電率、μ0;真空中の透磁率、J;微小電流源(微小DP)の電流密度を示します。
※ 残念なことにこの微分方程式の解き方は明示してくれていません。
図7.5のように原点Oから距離r'の位置にある体積領域vの内部に波源J(位置ベクトルr',|r'|=r')がある場合を考える。原点から観測点P(位置ベクトルr)までの距離をr(=|r|)、波源から観測点までの距離をR=|r-r'|とすると、補助ベクトルAは次式で与えられる。
A=(μ0/4π)∫(J(r')/R){e^-jkr)}dv ....(7.4)
ここで、R=|r-r'|、波数k=2π/λ、λ;波の波長
※時間項のjωtは省略されていますが、ほぼ同じ解を得ています。
※μ0が冒頭にかかるのは、磁界H=(1/μ0)∇×AとしているからでHを用いる場合はこちらが正解です。一方、アンテナ本は、磁界B=∇×Aとした形式になっています。互いの関係は、B=μ0H(真空中の場合)です。
次に、微小電流源から放射される電磁界を考える。この場合、電磁界は球面上に放射されるため。球座標系(r,θ,φ)で考えると都合がよい。電流源が座標原点に置かれ、z軸方向に向いているものとする。このときR=rとなり、補助ベクトルAの成分はz軸成分Azのみとなる。さらに、電流源の長さをΔl、太さを十分細いものとし、全電流を実効値Iを用いて考えれば、電流源の体積積分は、IΔlとなり、Azは次式のようになる。
Az=(Iμ0Δl/4πr)e^-jkr ....(7.5)
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